通訳あるある。
それはすなわち、とっさにドンピシャの言葉が出てこないこと。
通訳は、瞬時に、適切な言葉を選んで声に出さなければいけません。
迷っている時間がないので、ともすると直訳調になってしまうことがあります。
後で思い返すと、「なんであの時にこの言葉が出てこなかったのか」と悔やまれることがあります。
例えば先日、ある会議でちょっと緊迫したやりとりがありました。
イギリス人の質問者が、「この状況についてあなたはどう思っているのか」と、相手(日本人)に問いただす場面でした。
相手はそつなく答えを返したところ、イギリス人がすぐにこう聞き直したのです。
「Is that the right answer?」
通訳者の私はとっさに、「それは本当に正しい答えでしょうか」と日本語に訳した。
もちろん訳としては間違っていません。
前後の状況も踏まえ、質問者の意図は相手の日本人に伝わったとは思います。
しかし私の中では、何かしっくり来てきませんでした。
パズルのピースがピッタリはまっていないような、歯がゆい感じが残ったのです。
どんぴしゃの言葉がふっと沸いて出てきたのは、その日の夜、家に帰ってからでした。
「Is that the right answer?」
(それはあなたの本心ですか?)
そうだ!!これだ!!
あのちょっとシニカルなイギリス人が、かすかにいたずらっぽく尋ねたのは、この表現であるべきだったのです!!
霧がサーっと晴れるようにスッキリしたのと同時に、なぜこの表現がとっさに出てこなかったのか悔やまれました。
通訳としてさらに経験を積み、言葉の裏にある本当に伝えたいメッセージをお伝えできるよう精進します。