投資家と企業のIR(Investor Relations:投資家向け広報)の打合せに通訳として参加することが多い。
海外投資家サイドの通訳であることもあれば、企業側の通訳として会議に出ることもある。
いずれの場合も、通訳である私はなるべく中立的に、投資家と企業が対話を通してお互いに少しでも分かり合えるように努めている。
どちらにも言い分があると思うからである。
多くの日本の企業は、すばらしい技術、製品、サービスに裏付けららた強いビジネスに誇りを持っている。
投資家は企業との対話を通して理解を深め、有望な投資先を発掘したいと考えている。
そう、どちらにも言い分はあるのだ。
ただ一つ言えるのは、企業は株式を公開している以上は、なるべくわかりやすい言葉で投資家を始めとするステークホルダーに、彼らが必要とする情報を提供する「努力」をしなければならないということだ。
そして株価は、その企業の努力を表す一つの評価指標と言えるのではないだろうか。
そうした投資家の言い分をよく表したIRミーティングが先日あったので、それを紹介する。
そのIRミーティングで、海外投資家がある企業の社長にこう問うていた。
「経営陣は自社の株価が市場で低く評価されていることをどのように考えるか」
その企業は、利益率の高い優良なビジネスモデルを有していながら、競合他社と比べて相対的に株価が
低い。
低い。
そのことを投資家が指摘したのだ。
ビジネスに圧倒的な自信を持っている社長は、「株価は市場が決めることで、我々は事業をさらに良くすることに専念する」と少し不快感を示しながら答えた。
それに対して海外投資家は次のように返した。
「株価(市場の評価, valuation)は、 企業の潜在的な成長力に対する投資家の評価といえるが、 投資家が見ているのはそれだけではない」
「我々は同時に、次の3つに対する企業の取組みも見ている」
「資本の株主分配に関する企業の方針」
「コーポレートガバナンスの取組み」
「定性的、定量的な情報開示に対する企業の姿勢」
これらに対して経営者がどれだけ真剣に取り組んでいるのかが株価にも反映される。
そのことを理解して企業経営を行ってほしい。
株価を意識しながら経営判断をする義務が上場企業にあるのだ。
↑と、最後の部分はさすがにここまではっきり言わなかったが…。
この投資家の言い分はもっともだと思った。
iProfessは、これからもこうした企業と投資家の対話の機会を広げるお手伝いをしていきたい。
コミュニケーションを通して互いの理解を深めることが、企業と投資家のwin-winの関係につながると思うからである。